2018年4月25日水曜日

ヨニンミマン アルバム「オンガク」 収録曲

それぞれの曲について、作った本人による解説…というほどではありませんが、どんなイメージで作ったかコメントさせてもらいました。
まずは聴く人に委ねたい気もしますが、読んでからあらためて聴くと「へぇ、なるほど」と思うこともあるかも?よければ参考にどうぞ。 

1. 歩いて帰ろうか
楽しい一日だったはずなのに、急に雲行きが怪しくなって、まったくサイテーな日に変わってしまうことがある。でも時が経って思い返してみれば、ただただ悪いことだけでもなかったのかも。雨の中トボトボ歩く自分に、俯瞰で見てるもう一人の自分が、背中をトンと叩いて言い聞かせるような気持ちで書いた歌詞。個人的に気に入っているのは「キレイな歌口ずさんで」というフレーズ。心配せずに気を楽に、なるべく今日はネガティブなこと言わないでおこうよ、というような意味ですかね。

2. ないものねだりの日々
一貫した確かな信念を持って生きるなんて、夢のまた夢。現実は、何だか考えもまとまらずフラフラしていて、ハッキリした夢や目標なんかも持てないまま。それでも世捨て人にはなりきれず、何かを探し求めてウロウロ。そんな自分の姿を表現したら、サビの「相変わらずの ないものねだり日々 僕はただ彷徨う」になりました。ちなみにこの曲で初めて「僕」という一人称を使いました。まずは2 文字というその短さ。そして口に出した時の素朴な響き。歌詞は、言いたいことを言うだけじゃなく、メロディにピッタリ一致してないといけません。実際に口に出してみた時に、譜割りが不自然じゃないか?リズム感が出ているか?歌ってみて心地よい言葉を選ぶようにしています。

3. 星
18 年間家にいて長年一緒に暮らした愛犬が亡くなった時、不意に「星になって」という サビの出だしがメロディと共に降りてきました。それからしばらく経って、たまたまある人と話していたら、その方も長年連れていた愛犬を亡くした経験があることを知り、「あなたも胸の奥に星一欠片持っているような人だったんだ」と思った瞬間、「僕の心の片隅に」という続きのフレーズが浮かび自分でも驚きました。これはなんとしても一曲通して書き切らなければと心に決めたものの、そのサビへと向かうようなメロディ、また直接的な表現を使わずに大事な誰かを亡くしたんだと伝わるような言葉選びに、かなり苦戦しました。ちなみに私は作詞の時、「おしえて」と「おさない」や、「ほしになって」と「ほうせきみたいに」のように、同じメロディに対して出だしの文字をそろえる、いわゆる“頭韻を踏む”ことが多いのですが、これはあえて制限を設けることで、膨大な選択肢から言葉を絞り込みやすくする為です。

4. 太陽が昇ったら
メロディとかなんとなくのアレンジは、もうずいぶん昔に作ってあって、長年眠っていた曲です。知人に結婚のお祝いの気持ちを贈りたいなぁと思った時に、この曲のメロディを思い出し、これなら伝えたいテーマを乗せて歌えるかもしれないと思い、あらためて歌詞をつけることにしました。ただ、単に結婚をゴールとか言って手放しに喜ぶだけのお祝いソングにはしたくなかったのです。夫婦に限らず、例えば親友とか、仕事における右腕のような人とか、人生における広い意味でのパートナーとの繋がりをテーマに書きたかった。実は新婚のご夫婦に贈る目的の他にもう一つ、旦那さんの看病で疲れ果て、自分の無力さを嘆き落ち込んでいた知人を励ましたかったというのもあります。「誰も責めずにいよう」という歌詞を入れていますが、とにかく他人を許そうというよりは、そんなに自分を責めないでほしいというような気持ちを込めました。

5. この夜を
一番先に浮かんだのは「この気持ちわかるかな あの人なら」というフレーズだったと思います。そういう気持ちが曲を作る原動力にもなっている気がするんです。つまらないことでやたらと悲しくなったりして、悶々と過ごす夜。とっくに済んだはずの気持ちまで今さら引っぱり出してきて、いちいち傷つき直したり。懲りずに繰り返す不毛な夜を超え、また朝を迎える為には、こんなことあの人に話したら、笑い話になるかな…「わかるよ」って言ってくれるかなって、友達の顔を思い浮かべること。そんなことが、大げさですが、かすかな希望になります。だけど今はとにかく、一人きりでこの長い夜を過ごさなければと、か弱いながらもなんとか自分で自分を支えている。曲全体の印象としては、あえて夜の闇とか湿っぽさや重さが出過ぎないようにしたいと思って作りました。

6.One Day
落ち込んで、時間が経ってわりと平気になったり、周りの人の言葉で元気になったり、そういう気分の上がり下がりは日々あると思いますが、辛いを通り越して「しーん」という空白の世界に行ってしまったらもう、しばらく周囲の人からの「早く元気になってほしい」という優しさや期待になかなか応えられなくなってしまいます。そこからまた「そろそろ歩き出そう」と動き出すのは、自らがある日、思い立つというきっかけしかない。だけど、結局自分の力だけが頼りだと言いたいわけではありません。その日が来るまでに、どれだけ周りの人の気持ちをもらっているか、どれだけ支えてもらったか、そして、どれだけ待ってもらってたか。そのことにフと素直に感謝できる時、それが、長く暗いトンネルを抜けて、新しい何かを始められる「ある日」になるのかな、と。

7. 音楽
私は今まで音楽をやってきて、音楽に救われてきた者ですが、音楽の力とか可能性だけではなく、逆に音楽の限界について考えさせられることもあります。でも、やっぱり音楽を通して、心の深いところで誰かと何かを共有したいという思いがあります。この曲で表現したかったのは、この場で今、同じ音楽を聴くということが叶わない人、そういう人のことを心の奥でずっと気に掛けるような気持ち。遠くの人を心配したり、懐かしく思い出したりするような気持ちです。でもそういう気持ちが湧いてくるきっかけが、また音楽だったりする。音楽が、過去の記憶とリンクして、昔のことがありありと思い出されるような感覚です。

8. サヨナラワルツ
誰にとっても、「ホーム」と呼べるような場所ってあると思います。そこに行けば昔からの変わらない仲間に会えるとか、自分だけのお気に入りの景色が見れるとか、そういう、心の拠り所となる場所。そこに行くことで、ちょっとしたパワーもらって帰るみたいなことがあると思うんです。この曲は、私なりに「ご縁」をテーマにした曲を書きたいと思っていて、「ここ」という特別な場所と合わせてイメージを膨らめました。ところで「サヨナラワルツ」って、何故そんなタイトルにしたかと言いますと、ライブの最後なんかで「じゃ、ここはしんみりせず明るく、短い曲やって帰ります!」みたいな感じでカラっと終われる曲が一曲欲しいなと思って、小さい頃見ていた教育テレビの「おかあさんといっしょ」のラストに流れる、にこにこぷんの「さよならマーチ」みたいな感じの雰囲気にしようと思ったんです。それで、作ってみたらなんと3拍子だったので、「サヨナラワルツ」としました。

~おまけ~
「オンガク」のジャケットについて
ジャケットの絵やタイトル文字は、私自作の消しゴムハンコをベースにしています。実際に紙に押したものを写真に撮って、パソコンに取り込んで色を付け配置して…とけっこうアナログとデジタルのハイブリッドなのです。最初からデジタルで作ればもっとラクなのでしょうが、回り道したからこそ出せる味があると思っています。

ジャケットって、収録曲の内容と関連あり過ぎてそのままでも趣が無いし、逆に無さ過ぎても調和が取れず ちぐはぐになっちゃうし、バランスが難しいところです。
なんとなく収録曲にも合うような、でも何か別のストーリーが感じられるようなものがいいな、と思って、イメージを膨らめました。

今回の主役は、フレンチブルドッグのヨンタ君。
彼は、おそらく音楽を観賞するという感覚はわからない。ただ、側にあるラジカセから聞き覚えのある音楽が流れてきた時に、記憶とリンクして思い出が甦ることはあるみたい。
ウトウトまどろんでる時には、音楽と一緒に、いくつも夢を見ることがある。(犬って夢見るんですよ)
その夢に出てくるのは、彼が「夢にまで見ちゃうくらい」心惹かれてるもの達です。
例えばお気に入りのテニスボール、何個でも食べたい骨形ビスケット、噛み噛みして遊ぶネジネジおもちゃ、たまに外を通りかかる近所の猫、そして大好きな飼い主の愛用してる手袋。
浮かんでは消えるヨンタの夢に、音楽が合わさっています。
そんなイメージです。

サブスクの時代ですが、私はCDのジャケットや歌詞カードと合わせて音楽を味わうのも大好きです。CDをもらってくれて、大事に聴いてくれてる方、本当にありがとう。